REPORT
2016.07.26
ユーザーや企業とのオープンな共創をうながすIoTに迫る!
〜新規事業創出プログラムから生まれた成果とは?〜
組織内外の多様な人との関わりから新たな価値を生み出す「共創」に注目する企業が増えています。自ら共創を実践しながら、共創のためのツールである「MESH」という製品を開発した萩原丈博さんに、共創による価値創造の可能性について伺いました。
2016.07.26
組織内外の多様な人との関わりから新たな価値を生み出す「共創」に注目する企業が増えています。自ら共創を実践しながら、共創のためのツールである「MESH」という製品を開発した萩原丈博さんに、共創による価値創造の可能性について伺いました。
ゲスト:萩原丈博 (ソニー株式会社 新規事業創出部 I事業室 MESHプロジェクト)
モデレーター:庵原悠 (株式会社岡村製作所)
ソニー株式会社の新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(“SAP”)から生まれたIoTキット「MESH(メッシュ)」は、大人も子どももカンタンに「あったらいいな」を実現できる、オープンな共創をうながすツールです。そして、このツール自身もまた、オープンイノベーションの場やしくみを通して、アイデアが形となり生み出された成果でもあります。
共創への関心が高まる一方で、その効果の不透明性や、成果の不確実性に悩まされている企業も多いのではないでしょうか。今回は、ソニー株式会社・MESHプロジェクトのリーダーである萩原丈博さんにご登壇いただき、MESHプロジェクトにおける共創の実践事例を伺い、ユーザーと企業の共創によって生まれる価値創造の可能性や、モノづくりの未来について考えました。
庵原:本日はよろしくお願いします。まずは萩原さんの自己紹介とMESHの説明を含めて、プレゼンテーションをお願いします。
萩原:萩原と申します。弊社の新規事業創出部では、新しい事業の枠組みを生み出すための受け皿として、「Seed Acceleration Program」という新規事業創出プログラムを実施しています。MESHは、その中のプロジェクトとして生み出され、製品化したものの1つです。他にもこのプログラムから生み出された新規事業の種となるプロジェクトは「First Flight」というクラウドファンディングとEコマースのサービスを兼ね備えたWEBサイトに情報を公開し、クラウドファンディングという形で皆さまの支援とご意見をいただきながら活動しています。
MESHは、人感センサーやボタン機能などがついた小さなブロック状の電子タグです。専用アプリを使ってインターネットや他のデバイスとつなぐことができるので、部屋のドアや写真立てなどにMESHを取り付けるだけで、誰でも簡単にIoTを活用した仕組みを作ることができます。
MESHを作った目的は、「あったらいいなを簡単につくれる世界」の実現です。私がMESHプロジェクトを進めていく過程で最も強く感じたのは、あったらいいなと思う新しいアイデアとは「新しい組み合わせ」であるということです。最近は特に、モノ(物質)とコト(動作)の組み合わせが求められているように感じます。モノというのは、例えばイスや机、コップ、壁、ドアといった、皆さんの身の回りにある家具や製品などの物質のことです。それに対してコトは、触る、持つ、振る、叩くといったような「動き」です。しかし、動かないモノに動作のやり取りというコトを付加するということは難しく、もっと簡単にモノにコトを付加でき、アイデアを創出しやすくするような、動作を抽象化したツールを生み出せないかと考え、MESHが誕生しました。
MESHを用いたアイデアメイキングなどのワークショップでは、様々なモノにMESHを貼り付けて、インターネットにつなぐことでより便利なモノにしてみたり、面白い仕組みを作ってみたり、という体験を提供しています。MESHと日用品などのモノを実際に触りながら考えることで、お子さんや専門的な知識がない方でも、楽しみながらIoTを用いてアイデアを生み出すことができるという効果がありました。ワークショップでMESHを利用することで得られた効果をまとめると、以下の6つになります。
①苦手意識の克服
「新しいものを生み出すのは難しい」という意識を克服
②ITリテラシー
自らの手で、IoTを用いたモノづくりができる
③コミュニケーション
「何を作る?」など、周囲とのコミュニケーションが活性化
④コラボレーション
多様なヒト、モノ、コトとのコラボレーション
⑤論理的思考
モノを動かす仕組みを学ぶことができ、それを活用することができる
⑥課題解決能力
身近な課題を発見できるようになり、解決に向けて試行錯誤できる
以上の6つに加え、MESHを使った方々に共通して、「楽しい」という感覚を味わってもらえることも重要です。簡単に仕掛けができ、周りからフィードバックをもらうことができるので、一見くだらないと思ってしまうものでもすぐに実現して、みんなで笑うことができ、その繰り返しの中でより良いアイデアが生まれていくこともあります。
「楽しかった」という感想の他にMESHのワークショップ参加者からよくいただくのは、「ものの見方が変わった」という言葉です。モノにセンサーを仕込むという作業は、一般的には専門的な技術を持つ方がすることです。ワークショップに参加された方は、それを自分でできるなんて考えたこともなかったという方がほとんどで、そうした方々がMESHを使ってモノづくりを経験することで、ワークショップが終わった後も、「身の回りのモノにこういうセンサーを仕込んだら面白いんじゃないか」「こういう仕組みがあればもっと便利になるんじゃないか」といった考えが浮かんでくるようになります。MESHが、生活の中の課題発見や、解決能力を自然に養うことにつながっていると実感しています。
庵原:ありがとうございます。これまでのワークショップでは、具体的にどういった方を対象に行われたのでしょうか。
萩原:小学生や中学生、大学生、社会人向けなど、年齢を問わず様々なワークショップで利用していただいています。大学では、デザインを学ぶ学生の授業で利用していだたくことが多いです。モノづくり体験やコトのデザインの仕方を教えたいというときに、MESHを活用していただいています。「未来の空間を考えよう」といった、未来思考をテーマにしたワークショップで使っていただくことも多く、例えば、クックパッド株式会社様と、「未来のクッキングを考える」というテーマのワークショップを開催し、共創に取り組んだりもしました。
庵原:そうなんですね。続いて、MESHプロジェクトについて深掘りしていきたいのですが、プロジェクトが生まれる前に、萩原さんが「共創」に着目したのはなぜだったのでしょうか。
萩原:今の部署に所属する前は、研究開発の部署にいたのですが、お客様の声を直接聞くことのできる機会がほとんどなく、お客様のニーズを的確にキャッチして事業に生かすためにも、外の世界に出ていかなければならないという思いを抱いていました。
そんな中、2011年から1年間、スタンフォード大学に客員研究員として在籍する機会を会社からいただきました。その1年間を過ごす中で衝撃を受けたのが、シリコンバレーでは毎日、「Meet up」と呼ばれる集まりがあり、その集まりで多様な人が同じテーマについて活発に意見交換を行っている状況を目の当たりにしたことです。私はMeet upを経験し、新たな事業創出のためには社内、社外という枠組みにとらわれる必要はなく、人と人とのつながりが大切なのだということを改めて実感しました。その体験から、日本でも様々な立場の人が一緒にアイデアを出し合えるような場やツールを生み出せないかと考えるようになりました。
庵原:共創の現場を知るところから、その価値に関心が向くようになったのですね。MESHが製品化される基盤となった、Seed Acceleration Programとは、具体的にどういったプログラムなのでしょうか。
萩原:Seed Acceleration Programは、既存の事業にとらわれず、社内外で共創して新しい事業を生み出していこうという思いから生まれた、社長直轄のプログラムです。MESHプロジェクトのような社員による新しい取り組み自体は以前からあったと思うのですが、既存の事業以外のアイデアを会社で支援し事業化していく仕組みとして、Seed Acceleration Programができた、ということです。
プログラムは、かなり自由度が高いものになっています。社内で完結させなければならないという決まりがないので、様々な展開の可能性があります。MESHのアイデア自体は、Seed Acceleration Programができる前からありましたが、Seed Acceleration Programのプロジェクトとして進めることで、プロジェクトの立場がはっきりとしたため、製品化や量産化に向けた関係部署とのやりとりがスムーズになり、より加速して前進できましたね。
庵原:企業でこうした新規事業創出プログラムの仕組みをきちんと整えているのは、稀有なケースだと思うのですが、WEBサイトのFirst Flightはどのような効果をもたらしていますか?プログラムから生まれたプロジェクトを資金面でお客様に支援していただくというプロセスが生まれているのでしょうか。
萩原:クラウドファンディングを用いているので、支援という側面もありますが、First Flightの場合は、お金を集めるというよりも、お客様との共創を促すという意味合いが強いです。これまで世の中になかったものを生み出すとなると、どういった方がお客様として利用してくださるのか、そもそも製品としてビジネスが成り立つのかといったことを考えなくてはなりません。
ここにも共創の考えがあって、お客様と一緒にプロジェクトを育てていきたい、社内にはなかった視点を取り入れていきたいという思いで、First Flightという仕組みがあると捉えています。弊社では、こうした共創を促すWEBサイトの他にも、本社の1階に「クリエイティブラウンジ」という共創空間も設けており、プロジェクトや目的ありきではなく、日頃から様々な方に来ていただいて、空間を利用する中で共創が生まれてくるような環境が用意されています。
庵原:新規事業創出のために、会社全体で共創のための仕組みや空間を用意しているんですね。MESHプロジェクトは開発段階から情報を公開して、お客様に実際に触っていただいたりしながら製品化を目指したという点で、ユーザーを巻き込んだオープンイノベーションの事例だと言えますが、なぜオープンイノベーションを用いてプロジェクトを進めていく方法を採用したのでしょうか。
萩原:MESH自体は、特別な技術を用いたものではないんです。スマートフォン1台に詰まっている機能を分解して、1つずつ小さなブロックの中に入れたようなモノなので、製品として世の中に出すためには、なぜそれを作ったのかというしっかりとしたコンセプトが必要でした。もちろん、MESHのアイデアが誰かに盗まれてしまうのではないかという心配もありましたが、お客様に納得して使っていただくには、やはり開発段階で実際に使ってみていただいて、フィードバックをいただくのが一番だろうという考えに至りました。
開発初期の段階で、MESHのコンセプトについていろいろな方に口頭で説明しても、コンセプトに響いて共感いただく方は少数派でした(笑)。でも逆にこれが、コンセプトに共感いただいた方や必要とされている方から学習していくことで、独自性のあるものが出来あがるのではという確信につながりました。開発段階のMESHを体験したお客様のうち、共感いただいた方に対して、どんなところに面白さを感じ、どこに課題を感じているのかということを詳しく聞いていくことで、少しずつアイデアが洗練され、お客様が望むものに向かってプロジェクトが加速していきました。
当時、オープンイノベーションを実践しているという感覚はなく、市場も既存のデータも存在しない中で始めたお客様へのヒアリングでしたが、続けていくうちに色々なことが回りだし、MESHを必要としてくださるユーザー層がわかりました。
庵原:MESHプロジェクトが始まった2012年には、Seed Acceleration Programは存在しなかったとおっしゃっていましたが、外に向けてMESHの情報を公開したことに対して社内での危機感や反対意見はありましたか?
萩原:ひっそりやっていましたので、社内でもあまり知られていなかったと思います(笑)。
庵原:そうだったんですね(笑)。Seed Acceleration Programが立ち上がってからは、会社として、オープンイノベーションを用いてプロジェクトを進めていくことを認めていただいた形となったということでしょうか?
萩原:そうですね。あとは、私がMESHのアイデアを持ったまま、研究開発部門から、新規事業創出を目的とした部署に移ったので、MESHプロジェクトのオープンイノベーションを認めてもらいやすい状況になったという背景もありました。
庵原:会社の仕組みの変化と、萩原さんご自身の状況の変化のタイミングが重なったのですね。First Flightが開設される前に、MESHプロジェクトはアメリカのクラウドファンディングサイトを利用していたと伺ったのですが、クラウドファンディングを利用して良かったことや、逆に大変だったことなどはありましたか?
萩原:アメリカのクラウドファンディングサイトを利用するに至ったきっかけは、「Maker Faire」という、アメリカの大規模なモノづくりイベントにMESHを出展させたことでした。2日間で15万人ほどが来場するイベントで、MESHがどのように評価されるかを調査するために参加したのですが、多くの方にご好評いただき、「製品として欲しい」という声もありました。そこで同じようなものが無いこともわかったので、現地のアメリカのサイトで、クラウドファンディングをしてみようということになりました。
クラウドファンディングサイトは、基本的には小さな組織や、個人のアイデアを実現させるためにみんなで支援していこうという目的のもので、大企業のマーケティングのために利用するものではありません。そのため、サイトの運営側にも企業のマーケティング目的ではないということや、自分たちで立ち上げたMESHプロジェクトに対する思いを伝え、運営者がその思いに共感してくださり、プロジェクトの掲載が実現しました。
庵原:クラウドファンディングを利用したり、新しいプロジェクトを進めていったりする際に、企業名を出すかどうかということは、避けては通れない議題ですね。
萩原:隠しているわけではないんですけどね。企業名を出してしまうと、皆さまに評価していただいているのがプロダクトそのものの価値なのか、企業の価値なのかということがわかりにくくなってしまうというデメリットがあります。プロダクトの良し悪しではなく、ソニーだから評価していただいているという状況を避け、MESHそのものを評価していただきたいという思いは当初からあったので、発売後も、MESHとして販売展開をしています。
庵原:なるほど。では、参加者の皆様から質問はございますか。
参加者:ソニーが進めるユーザーとの共創プログラムとして、「Future Lab Program」というプログラムもあるそうですが、それと「Seed Acceleration Program」の違いは何でしょうか?
萩原:「Future Lab Program」は、新規事業創出部ではなく他の部門が運営する全く別のプログラムで、MESHは関係がありません。共創にまつわる複数のプログラムが社内で同時に進んでおりまして、ソニーとしては、新たな価値創造の手法を模索している状態だと思います。
参加者:MESHの名前の由来はなんですか?
萩原:創る(make)、体験する(experience)、共有する(share)が簡単にできるツールという意味を込めて、それぞれの単語の頭文字から取っています。もう1つの意味として、MESHの特徴である1つ1つのセンサーのつながりから、「ヒトとモノ」や「モノとコト」が網のようにどんどんつながっていってほしいという願いから、網(mesh)という単語そのものに重ねて名付けました。
参加者:Seed Acceleration ProgramでのMESHプロジェクトと、新規事業創出部のお仕事は、別のものとして存在しているのですか。
萩原:Seed Acceleration Programを運営している新規事業創出部では、イノベーションが生まれるエコシステムをつくるプラットフォームの機能と、新規ビジネスアイデアを育成する事業化機能の二つがあります。私は「事業」の方のMESHプロジェクトに集中しています。Seed Acceleration Programの事業室はひとつひとつベンチャーのように独立しているため、販路開拓、開発など全てをプロジェクト単位で推進することになり、多岐にわたる業務の中で他のことをする余裕がないというのが正直なところですね(笑)。ただし、プラットフォーム側でノウハウを蓄積し横展開を図っています。私はMESHがビジネスとして自立して回っていくように、プロジェクトメンバーと奮闘しているところです。
参加者:Seed Acceleration Programのような、社員が新しいアイデアを生み出しやすい環境や風土を整えるために必要な要素とはなんだと思いますか。
萩原:社員一人ひとりが、社内外の人とのつながりを大切にすることだと思います。新しいアイデアを積極的に生み出そうとする雰囲気は、ソニー独自の風土と言われることも多いのですが、私はそんなことはないと思います。プロジェクトを進める中で、様々な企業の方とお話しをする機会がありましたが、どの企業でも新しいことを考えている方はいらっしゃいますし、私自身、社外の方とのコミュニケーションから気づかされることもとても多いです。様々な方とのつながりを大事にしておくことで、いざアイデアを形にするときに、社内の他部署の方や他の企業が協力してくれるということもあります。人のつながりを大切にすることと、新しいアイデアを支える制度を作れるか、というところが重要だと思います。
参加者:クラウドファンディングで、ユーザーとなりうる方々からご意見をいただいたとのことですが、その際に集まった資金はMESHの開発に使われたのでしょうか。
萩原:集まったお金は開発費の一部として使わせていただきました。イメージとしては、予約販売という形に近いと思います。クラウドファンディングの仕組みでは、目標金額を設定し、それに達しなければお金はいただくことができないという決まりで、MESHは目標金額を達成したのでその分のお金をいただき、お礼として支援してくださった方々に出来上がったMESHをお送りした、という流れです。
MESHへの意見が欲しいなら、お金までいただく必要はないんじゃないか、ということをおっしゃる方もいるのですが、プロジェクトを進める中で、情報を公開してそれに対するコメントだけいただくのと、本当にMESHが欲しいという思いでお金を出してくださった方からいただくコメントでは、質が違うということを感じたので、私たちはクラウドファンディングを利用しました。クラウドファンディングによって、どんな方がどのような目的でMESHを購入したいのかを知ることができました。
庵原:それでは、今日のまとめとして伺いたいのですが、萩原さんにとって、ユーザーと企業が共創することによって生まれる価値とは、何だと思いますか。
萩原:ユーザーと企業の共創というキーワードを考えるとき、私には印象に残っている本があります。トーマス・トウェイツの『ゼロからトースターを作ってみた』という本なのですが、筆者がトースターに必要な鉄を作るために鉄鉱石を採りにいったり、プラスチックも石油の状態から作ったりというように、本当にゼロからトースターを作るんです。そうして出来上がったトースターは見た目も凄まじくて、既存の製品のようにはなりません。
テクノロジーが発達して、誰でもモノづくりができる世の中になったと言われていますが、このトースターのように、ユーザーが原材料から全てを作るわけではないですよね。私はこの本を読んだ時に、企業がモジュールを提供して、それをユーザーが組み合わせるという状態を「モノづくり」と呼ぶ時代になったのだと思いました。わかりやすく言うと、住宅という空間に、そこで暮らす人が、様々なメーカーが作った規格化された家具や電化製品を自由に配置していって、その人だけの住まいが完成するイメージです。
このモノづくり時代はどんどん加速していくのではないかと考えています。IoTという概念が登場し、将来あらゆるモノがインターネットにつながるようになるということは、どのモノとモノをどうつなぐかということで、つまり色々な組み替えが可能になるということです。そのため、その組み替えに必要なアプケーションや、IoTに対応したモノを企業が提供して、それをユーザーが好きなように組み替えて使うということが今後のユーザー体験になっていくと思います。その中での企業の競争関係は、組み替えの安全性や、ユーザーがカスタマイズできる余地や互換性があるかといったところで展開されるようになってくると予想しています。MESHを開発する際も、そうした機能やユーザー体験を意識しました。
庵原:モノづくり市場全体が、「共創ができるプロダクト」を前提としていくということでしょうか。
萩原:そうですね。プロダクトそのものの概念が変わっていくと思います。例えば、テレビやカメラなども、製品として完成して販売されていたところから、どんどん分解されて、部品のように他と組み合わせることが前提となったものが販売されるようになったりするのではないでしょうか。共創できるプロダクトが主流になってくれば、価値創造の可能性が飛躍的に高まると考えています。これまでは、企業や専門的な技術を持ったプロフェッショナルが製品としての最終価値を提供し、ユーザーがそれを購入して利用するという形でしたが、創造するための素材やツールを企業が提供し、ユーザーがそれを組み合わせてモノをつくることができるようになることで、誰もが価値創造に携わることができます。そして、創造したモノの情報をインターネット上で共有したり、データベースとして蓄積したりすることで、世界的に価値創造のバリエーションが増えていくと思います。これまでの産業のあり方が大きく変わっていくかもしれません。
庵原:共創のツールとして、MESHは今後どのように活用されることを期待していますか?
萩原:将来的には、身近なツールである文房具のように使っていただきたいです。文房具は、何か新しいものを生み出すツールとしてあるものなので、MESHもそういった形でより多くの人に活用されてほしいですし、企業や家庭の引き出しを開ければどこにでも文房具があるように、MESHも身近な存在にしていきたいという思いがあります。そのためには、私たちが率先して様々な立場の方々とコラボレーションして、MESHの使い方をより広げていかなければならないと感じています。
庵原:萩原さん、本日は共創にまつわる貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。
萩原 丈博
ソニー株式会社 新規事業創出部 I事業室 MESHプロジェクト
2003年ソニー(株)入社、So-netなどネットワークサービスの企画・開発に従事。2011年~2012年、スタンフォード大学訪問研究員。2012年にMESHプロジェクトをスタート。誰でも簡単に楽しく「あったらいいな」を形にできる世界を目指している。
庵原 悠
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