REPORT

2017.10.11

“SEA DAY 03” 開催レポート
[Day2-04] 「食」からはじめる「健康経営」~働く人のライフスタイルを豊かにするために~

健康経営が取り沙汰される中、健康的な食事を提供する社食など企業の「食」に対する活動が注目されています。株式会社おかん代表取締役の沢木恵太さんから、単なる食事の問題を超えて、一人ひとりのライフスタイルの充実まで効果がある、まさに「ワーク・イン・ライフ」の最先端の領域の話を伺いました。

■ゲスト

沢木 恵太(株式会社おかん 代表取締役 CEO)

■モデレーター

山田 雄介(株式会社岡村製作所 WORK MILLプロジェクトメンバー ワークプレイスストラテジスト)

密度の高いセッションが繰り広げられてきたSEA DAY 03もいよいよファイナルセッション、テーマは「食」です。健康経営が取り沙汰される中、健康的な食事を提供する社食など企業の「食」に対する活動が注目されています。今回のゲストは、質の高いお惣菜を置き菓子のようにオフィスに提供し、従業員の食生活と働き方の改善をサポートする事業を展開している株式会社おかん代表取締役の沢木恵太さんです。それは単なる食事の問題を超えて、一人ひとりのライフスタイルの充実まで効果がある、まさに「ワーク・イン・ライフ」の最先端の領域でもありました。

【沢木さんTalk】「食」からはじめる「健康経営」

株式会社おかん 代表取締役 CEOの沢木 恵太さん

「働く」を豊かにする

沢木さんが起業したおかんは、真空包装パックのお惣菜をオフィスに置き、いつでも自由に食べられるようにした「オフィスおかん」というサービスを提供しています。安価で栄養のあるメニューを提供しており、社員の健康増進に役立ちます。

沢木さんは同社のミッションステートメントを「働くヒトのライフスタイルを豊かにする」であるとしています。これはおかんが提供するのはお惣菜の配送サービスだけではなく、その先にある、働く人一人ひとりの人生の豊かさであり、幸せであるということです。

沢木さんは、「人生の1/3は働いて過ごす。働くことが幸せにならなければ、人が幸せになることはない」と話し、そこに企業が果たすべき役割があるとしています。例えばいま、働くこととは別の問題のために、働くことが困難になる状況があります。例えば健康が阻害されるなどの内的原因もあれば、育児、介護などの外的要因もあります。「働くことと、それ以外のライフ部分のバランスを取ることが重要で、そこに企業が介入し改善する必要がある。私たちが提供するのはその支援だ」と沢木さんは話します。

健康経営が求められる理由

これは健康経営が求められる社会の流れにも沿うものです。沢木さんは、健康経営が求められる理由を「人材確保、流出防止という労働力市場の課題解決」「生産性向上」の2点にあるとし、その根本的な対処法の一つとして食事があると見ています。

例えば労働力市場で勝つための要素として「働きがい」「働きやすさ」の2つを企業が実現しなければなりません。昔はハードへの設備投資によって働きやすさを実現しましたが、投資のできない現代では働きがいの実現に集中する傾向が強くなりました。しかし、「これからは再び働きやすさへ回帰する時代になるはず」と沢木さんは分析します。さらに、働きやすさはより広義のものとなり、「労働環境整備だけでなく、ワークライフバランスの基盤整備、健康などの個人のコンディションを整えることも含まれるようになるだろう」(沢木さん)とし、その複合的な課題の解決策として「食」があると解説。また、生産性向上の指標をプレゼンティーイズムに求めており、プレゼンティーイズムの原因となる生活習慣(病)の改善に企業がコミットできるものもまた「食」であるとしています。沢木さんは「健康経営として、企業が社員に介入できるのは、『食』の部分しかない。私たちが提供するのはそこのお手伝いをするものだ」と、おかんのバリューを語りました。

オフィスおかんの現状

おかんが提供するメニューは、原材料を厳選し、添加物も極力抑えた健康に配慮したものになっています。現在までに約900社が導入しており、そのうち500社はこの1年で導入され、「時代のニーズが急激に強まっていると感じている」と沢木さん。

導入する企業の目的は、「社員の食事改善」「人材採用ツール」「社員のコミュニケーション活性化」といったもののほか、自宅に持ち帰ることができるために家事軽減や「女性の活躍支援」の性格もあるなど、さまざまに利用されています。

そして、導入するうえでポイントとなるのは、サービス導入自体を目的にするのではなく、その先の目的のツールとして活用することだと沢木さんは述べています。ある企業では、健康経営を推進するトップの意思表示のツールとして導入しました。別の企業では、健康増進のための行動変容を促すツールとしてオフィスおかんを使い、また食事に対する講習も受けています。
今後は、働き方改革の統一指標を食事の面から作る取り組みや、働き方改革における食事の重要性を訴えるために設立した一般社団法人ワーク・フード・バランス協会での活動を加速していきたいと話し、トークを締めくくりました。

【Discussion】食から働き方を変えるには

後半のディスカッションの冒頭、まず山田からオカムラで1カ月間オフィスおかんを導入した結果の報告がありました。

山田:弊社でも実証実験的にオフィスおかんを利用してみたところ、もともと「こういうサービスを入れたら社員がどう反応するか」を観察する意味合いが強いものでしたが、いろいろ面白いデータが取れました。

およそ80名のワーカーが働くオフィスに導入した結果、1カ月の期間で1/3程度が利用し、利用者の約8割が昼食としての利用でした。使用頻度は週1回、月1回がそれぞれ3割程度でした。未使用者の中には「昼食時はリフレッシュのために外へ行きたい」という声があったなど食事に対する多様なニーズが分かったことは新鮮でした。
評価をアンケート形式で聞くと「福利厚生として評価」「オフィス環境の充実」「食費支援として有効」と、非常に良い反応が得られました。私たち岡村製作所はオフィスのハード面を主に扱うため、こうした食事サービスなどにあまり目が行き届かないのですが、やはりソフト面の充実もオフィス環境において重要ということに気付かされました。

また、設置場所に近い人ほど利用頻度が高くなることから、従業員への広報の仕方や使い方の説明など利用促進には運営面の課題も浮き彫りになったと感じています。

沢木:生々しい結果を聞かされると思ってドキドキしていましたが(笑)、これまでの導入事例で考えると、これは良い結果だったと思います。1カ月ではなかなか定着せず、利用率はどうしても低いものなので。

オフィスおかんのニーズ拡大の意味

山田:定着するにはどれくらい掛かるものなのでしょうか。また、定着させるポイントがあればお聞きしたいです。

沢木:3カ月がひとつの目安です。社員にどう伝えるかがポイントになりますが、これは企業の目的とも関わりますよね。トップの経営判断を反映したいなら、そのようなアピールも必要になりますし。残業で使ってほしいという企業がありましたが、それは社員にしてみれば「そんなに長く残業しろっていうのか!」と思ってしまいますが、残業を抑えたいというトップの意識があれば、「これを手早く食べて、さっさと残業終わらせて早く帰りましょう」というメッセージとともに広報するなど、意志と目的を明確にすると良いでしょう。

山田:最近はオフィス以外の場所でもオフィスおかんのニーズが高まっているそうですね。

沢木:工場のような現場仕事や、医療施設、ホテルなどサービス業の食事として利用されることが増えています。これは労働人口減少が顕著で、有効求人倍率の高い業界かと見ています。最近増えていると感じるのは医療と物流です。

もうひとつ意外だったのは自宅利用が増えていることで、これは非常に示唆的です。企業がますます個人のライフに介入する必要が増すことを示唆しているように思います。育児や家事の負担を企業がどれくらい負担できるかということであり、自宅活動を企業がサポートする必要が明確化していくと思います。これは企業が必ずしなければならないということではなく、選択肢を増やしていくということかと思います。

働き方と休み方

山田:いま、「働き方」とともに「休み方」も重視されるようになってきています。沢木さんは「休み」については経営者としていかがお考えでしょうか。

沢木:働き方改革では、まずトップがきちんと休んで見せることが、社員に良い影響を与えると思っています。先ごろ、4人目の子どもが生まれた際に、私自身1カ月の育児休暇を取ったんです。本当に出社もせず家事オンリーの生活でした。これをやったら、他の社員が育児関係でいろいろ言ってくれるようになったんですね。「子どもが病気なので在宅でやってもいいですか」というように、きちんと主張するようになった。これはとても良い傾向だと思います。

こういうこともあって、私は土日に絶対パソコン開きません。土日であっても私からメールが来ていると、休むほうもおちおち休めないじゃないですか。トップ、マネジメント層がきちんと率先してやって見せることが、休み方を徹底するうえでは大切かと思います。

山田:まさに御社のミッションステートを実現し、社員のみなさんの生活が豊かになったのではないでしょうか?

沢木:いろいろ柔軟な休み方を検討するようになり、子育てに都合の良い、夏休みの取り方もできるようになりました。いい傾向だと思います。

山田:今日は「食」から始まり、育児や休み方など幅広く働き方について、企業がどう関われるのかについて議論できたと思います。貴重なお話、ありがとうございました。

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