REPORT

2015.05.25

”SEA DAY 00” 開催レポート 後編

複雑化していく社会環境の中で、オカムラが「はたらく」を描く実践の場として開設した、OPEN INNOVATION BIOTOPE “Sea” 。
後半はスピーカー勢によるパネルディスカッションとワークショップを通して、「これからのはたらく」について熱い議論を膨らませました。

TALK06

失敗という土壌作り

ブルームコンセプトの小山龍介氏。生い茂る緑とそこを流れる川からビオトープのある場所のヒントを探し、ビオトープを成立させるためのコンセプトについて語りました。

株式会社ブルームコンセプト 代表取締役 小山 龍介氏
まさにビオトープの現場からコンセプトのあるべき姿について語った

コミュニケーションメディアとしての「土壌」、失敗の共有・失敗の尊重

 ひとつは多様性。「様々な動植物がお互いに補完しあいながら、この空間を支え合っている。つまりどの植物・動物も欠かせない役割もっており、お互いに競合することなく協力し合いながら渓谷をつくり出している」と分析しています。
そして、空間を豊かにしていきたい、より豊かなものにしていこうという、渓谷全体としての目的意識が共有するコミュニケーションのメディアとしての「土壌」の存在。「動植物の死がメディアとなり情報を伝え、コミュニケーションを支えていると言うことができる。通常コミュニケーションというと生きている者同士が何か言葉を使ってコミュニケーションする、ということを想像しがちだが、ビオトープでは死骸が何か伝えていると捉えることができる」とも語ります。
仕事上で考えると、「失敗」「衰退」といった「死」がむしろ次の新しい成功への橋渡しになって、何かが共有されているという仮説をたてることができます。ビオトープという場所は、多くの失敗が許される場所であり、その失敗が蓄積されて次の成功につながっている。企業では隠蔽されがちな、これらの失敗をむしろ豊かなものとして受け取り、その痕跡を伝えていくということがビオトープを豊かにするためには重要な要素。
また「今までのフューチャーセンターが担ってきた役割は未来を見ていく・共有していく、未来のビジョンを皆で生み出していくということにフォーカスしていた。それに対してむしろビオトープでは過去をもう一度知る、過去からのコミュニケーションなど『失敗からの学び』に比重があると思う」と述べています。

場における与贈と返礼の循環

ビオトープにおける与贈の循環

「動植物が自らの死をもってその場を有機物として豊かにしていき、今度は逆に、場からの返礼として恵みを自ら受け取るという『与贈の循環』が起こっている」と小山氏。また「ビオトープというのは過去が蓄積されていく中でそこから未来が出現してくる空間であり、過去にそういった動植物たちが『与贈』したことによって豊かになっている、と捉えられる」と続けます。「いたずらに未来だけに集中するのではなくて、過去を振り返る。それも後ろ向きな形ではなく、過去に学んでそこから生み出していく。そんな働きがあることを促す場所なのではないか」とビオトープのコンセプトを語りました。

Panel Discussion

それぞれのビオトープ

セッション終了後は遅野井をモデレーターに、パネルディスカッションを実施。ビオトープのコンセプトを深耕していったディスカッションの一部をご紹介します。

豊かなコミュニティの場づくりにはどんな循環が空間の中に必要?

岩嵜氏:セキュリティゲートが近代オフィスの特徴。近代性を打ち壊すことが必要で、矛盾のようだがセキリュティがないほうが逆にいい。入りやすさは、人や情報の流入を促すことに繋がる。

川西氏:Win-Winの関係性や利益などを重んじる考え方から一旦離れることが大切。自分に返ってこなくても全体として循環していることに喜びや心地よさを感じるべきではないか。

諏訪氏:気軽に接点を生むフローを起こすことを大事にしたい。そのフローの循環から、ビジネスとして育っていく流れを生み出すことが重要。

松下氏:安全で自由なコミュニティはなかなかない。両立は難しいが、自由さを野性的に取り入れる場所が必要。感覚と物理的な場所をいったん切り離して、メディアをどう使うか、新たな循環モデルができるのではないか。

日本組織には「失敗を許容する文化」が不足しているのでは?

岩嵜氏:失敗のステータスのとらえ方を変える。失敗は「偉い」のである。失敗に対する評価をマイナスではなくプラスに組織の中でどうもっていけることがポイント。失敗の捉え方が鍵になってくる。

川西氏:研究面でいうと実験における失敗は「期待した結果がでなかっただけ」であり、「ちゃんと失敗」して学ばなくてはいけない。教育面でも同じように学生に失敗させていこうと思うが、課題は多い。

諏訪氏:起業家としては失敗の連続だった。組織構造や反対勢力まで含め周辺を巻き込みながら地道に進めていくことが一番の近道ではないか。

松下氏:教育の評価スケールに限界があり、成績の公平性と主観客観のバランスを操作できれば許容できるようになるのでは。日本では「失敗しない人が先生になって指導する」教師像が根強く、問題は根深い。

失敗における、日本企業の堅い考えを指摘する遅野井

働くことの価値観をどう世の中に表現していけばいい?

松下氏:認めてもらう価値観や異質な他者との出会いで、自分の価値観を軸として誰に認めてもらうかという「認める」ということをキーワードに表現していけばよいと語った。

諏訪氏:今の日本は景気がとてもよい。日本の風通しのよさや、様々なことに挑戦できる現状や世界のポジシションのよく、皆で楽しいことをやっていきたい。

川西氏:働き方も多様になり、働いている人も求めているものが違う。自分が周りに求められ、そして求めているものを周りの人たちにどれだけ伝えられるかという「いい働き方を考えていく」ことが重要。

岩嵜氏:週4日勤務とあとの3日を自分のやりたいことへ挑戦する人もいる。小さな失敗と成功をそこで試すような未来的な働き方が一般化したら面白い。失敗と成功のユニットを小さくすればよいのでは。

未来的な働き方について語る岩嵜氏

この場所(Sea)に対する期待は?

岩嵜氏:アクセスもよいので、場所としての「物理的な可能性」

川西氏:「遊びを爆発させられるエネルギーが出てくる場」

諏訪氏:緑が多く心地よい、「土日に様々な面白いイベントをする場」

松下氏:既存の価値観を破壊し乗り越える「怒られる場となること」

自然界のビオトープ同士が広域で繋がるのと同じように、様々な活動の蓄積が有機的につながり、色々な痕跡を残しながら社会が広く豊かになることの期待を込めてパネルディスカッションは終了しました。

ビオトープを背に、期待を語る川西氏

Workshop

Seaで「はたらく」を考える

列になっていたイスの配置がガラリと変わり、4人1組のワークショップが始まりました。1枚の円形の段ボールの板を4人の膝の上にのせて、大きなワークシートに書き込んでいきます。

身近に感じる「はたらく」ことへの課題

まずは互いに提供できることを挙げる個人ワークの後、グループ内での自己紹介。そして付箋とペンが配布され、身近に感じる「はたらく」ことに関する課題を書き出すワークに移ります。各テーブルで、予算・人間関係・モチベーション・通勤ラッシュなど、皆さん次々と付箋に課題を書き出していきます。一番多く見受けられたのは、「時間」に関する課題のようでした。自由時間の確保や、スケジュール調整、労働時間の管理といったところで、課題を感じることが多いようです。
個人ワークのあと、それぞれの付箋の要素をつなぎ合わせて、グループでのひとつの課題としてワークシートの中央に書き込みました。「コミュニケーションを高めるための時間と場所の作り方」、「楽しく働くためには?」、「働き方の多様性への対応」といった課題が各ワークシートに書き込まれていました。

 

同じ課題でも、メンバーが変わると違う解決方法が出てくる

メンバーが変わり、回を重ねるごとに、同じ課題でも自分の果たせる役割が変化していく様子が見られました。あるグループで、「ワークショップを開く」という課題解決法を初めに立てた参加者の方は、3回目のグループでは、どのような年齢や職種の方にワークショップを開くのか、といった具体的な内容に言及していました。グループワークの回を重ねるにつれて、皆さんアイデアの書き出し方にコツを覚えてきた様子で、サクサクと進行。ディスカッションはどんどん盛り上がっていき、「時間が足りない!」といった様子で白熱していたグループも多くありました。初めて知り合ったメンバー同士の強みを組み合わせて、ひとつの課題解決を試みるという作業に皆さん初めは苦労しているようでしたが、3回目のグループになると、「私はスケジュール管理係として、皆さんに働きかけることができます」といった自発的な発言や、「〜さんは、楽器が演奏できるので、そのパフォーマンスをきっかけに…」のような、メンバーの方の強みを理解した発言が至る所で聞こえてきました。
自分の強みについて考え、今日初めて会った方と「はたらく」についての課題を見つけ、解決方法を考えていく今回のワークショップ。多様な方々が集まった空間でイノベーションを生み出していく「オープンイノベーションビオトープ」を実感、実践していただけたのではないでしょうか。

ワークショップの様子  ワークショップの様子  ワークショップの様子
ワークショップの様子  ワークショップの様子  ワークショップの様子
ワークショップの様子  ワークショップの様子  ワークショップの様子

Closing Speech

この場で生まれたネットワークを使い、 それぞれのビオトープをつなげていきたい。

 カンファレンス最後のクロージングスピーチでは遅野井が登壇。ワークショップでの内容と感想を何名かの参加者に尋ねていきました。参加者それぞれ感じたことは異なっていたかもしれませんが、今回のカンファレンスに参加した全員が働くということについて考えを巡らせることができたのではないかと思える様子を見ることができました。
遅野井は「皆で蓄積したものをつかって課題解決を目指すということを実感して頂けたのではないかと思います」とカンファレンスの内容を振り返り、「このSeaという場に込めた想いや、この場にこういう期待があるということを参加者からヒントをもらうことができた」と述べました。

 オープンイノベーションビオトープの考え方自体は、今まさに「Sea」が最初の実例として世の中に提唱していきたい場の在り方のコンセプト。「今回のカンファレンスでは働くということに関してある程度答えやヒント、提案や新しい人とのネットワークなどいろんなものを得ることができたのではないか。得たものを糧にしてそれぞれの企業や地域、学校などで小さなビオトープを作り、この場でつながった皆さんのそれぞれのビオトープが有機的につながってひとつの大きな生態系を作っていく。そういったことで活動がどんどん蓄積され、外に出て、より豊かになっていくということが起きていくと、東京、日本、世界の様々な働き方やイノベーションに足跡を残すことができるのではないかと思います」と遅野井は伝えました。
「今後もこのSeaで、オカムラだけでなく今回新しくつながったネットワークを使いながら様々なアクションを企画し発信していきたい」とカンファレンスを締めくくりました。

今回得たつながりを活かし、今後Seaからアクションを起こしていきたいと語る遅野井

REPORTイベントレポート

CONTACT

「これからのはたらく」を知りたい方、考えたい方、つくりたい方、相談したい方、見学したい方、仲間が欲しい方・・・
もし少しでも「ピン」ときたら、お気軽にSeaにおたずねください。