REPORT
2024.11.08
【イベントレポート】“旅する”Sea 「Well-beingな働き方を実現するために必要なコミュニケーションのあり方とは?」を開催しました
テーマは“Well-beingな働き方”。Well-being・幸福学の第一人者である前野隆司さん、日立製作所の西本友樹さん、オカムラの佐藤直史さんをゲストに迎え、2024年11月8日に開催したイベントのレポートをお届けします。
2024.11.08
テーマは“Well-beingな働き方”。Well-being・幸福学の第一人者である前野隆司さん、日立製作所の西本友樹さん、オカムラの佐藤直史さんをゲストに迎え、2024年11月8日に開催したイベントのレポートをお届けします。
働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変えることをテーマに掲げるWORK MILL(ワークミル)プロジェクトでは、「はたらく」の多様な可能性を探るイベントを開催しています。今回は、最近耳にする機会も増えてきた“Well-beingな働き方”をテーマに、Well-being・幸福学の第一人者である前野隆司さんと、日立製作所でWell-beingコミュニケーションを支援するサービス「CO-URIBA(コウリバ)」開発者の西本友樹さん、そしてオカムラ渋谷オフィスでWell-beingをコンセプトにオフィス改装を担当したオカムラの佐藤直史さんを招きイベントを開催しました。
Well-beingとは、身体の健康状態が良好であるだけでなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態かつ継続性のある幸福を意味します。「すべてが満たされた状態」としてWell-beingという言葉が初めて使用されたのは世界保健機関(WHO)憲章で、近年、企業においても人的資本経営や健康経営が重視されるなかで、改めて従業員のWell-beingが注目されており、企業はWell-beingな働き方を推進していくことが求められています。
Well-being研究者として第一人者である前野さんは、Well-beingの高い従業員は一般的な従業員と比較すると創造性が3倍、売上も37%高く、欠勤率・離職率・業務上の事故率についても低くなる傾向があること話し、従業員のWell-being向上こそ企業経営の生産性を高め、人的資本経営の実現に直結すると話します。
また、Well-beingそのものである「幸福な状態」について“地位型”と“非地位型”の幸福を比較すると“非地位型”の方が幸せの持続性が高いのだそう。“地位型”とは文字通り社会的地位や金銭欲、物欲、名誉欲などドーパミンによる幸福であり、対して“非地位型”は、社会的・身体的・精神的な状態が良好であるオキシトシンやセロトニンによる幸福を意味します。
そして、この“非地位型”の精神的な幸福を構成する因子として①「自己実現と成長(やってみよう因子)」、②「つながりと感謝(ありがとう因子)」、③「前向きと楽観(なんとかなる因子)」、④「独立と自分らしさ(ありのままに因子)」の4つの因子を紹介。そのなかでも特に②「つながりと感謝(ありがとう因子)」が大事であるとし、オフィスにおいてもいろんな人が触れ合えるようなオフィスづくりと共に、従業員が利他の精神で働けるような仕掛けづくりをすることでWell-being向上に期待ができると話しました。
続いてオカムラの佐藤さんからは、Well-beingな働き方を実現するために必要なオフィスづくりとコミュニケーションのあり方について伺いました。佐藤さんはオカムラ渋谷オフィス「CO-EN LABO」の全体構想に関わり、CO-EN LABOはWELL認証※1) において最高ランクのプラチナを取得しています。
あわせて昨今のオフィスコンセプトのトレンドとして「Well-being」や「コミュニケーション」がキーワードとして注目されていることを紹介し、どうすればWell-beingなオフィスづくりにつながるのか、そしてWell-beingなコミュニケーションを推進するためにどのような運用が効果的なのかを、オカムラでの実例をあげて紹介しました。
まず、課題の根底として「オフィスと組織文化のズレ」があると話し、組織文化とオフィスがフィットすることが従業員のWell-beingや生産性向上に寄与することを紹介。企業における組織文化を集団-個人、保守-革新の4象限に分類し、例えば「集団×保守」な組織文化であれば“チームが集まって働く場”を意識するべきであり、「個人×革新」な組織文化であれば“個人の裁量で思い思いに過ごせる場”を意図的に設計するなど、組織文化にあわせたオフィス設計が重要であることを説明。そのうえで、オフィス環境だけでなく“運用”も欠かせない要素だと話します。
実際にCO-EN LABOでは「Famiwa(Familly×Work)」という制度を運用しており、オフィスを1つの家や地域に見立て、社員一人ひとりが役割をもち、自治会活動としてオフィス内のコミュニケーション推進活動に関わっています。例えば、CO-EN LABOには毎日新鮮ないちごが収穫できる「City Farming」※2) を設置しており、いちごのお世話を自治会活動として従業員が交代制で担当しています。担当者も意図的に違う部署の人をペアにすることで普段話すきっかけのない従業員同士のコミュニケーション活性化につなげているのだそう。このようにコミュニケーションを促すことで従業員のオフィスへの愛着を高め、心のやすらぎを感じる効果が期待できます。
その他にもパーソル総研との共同施策で「組織の幸せ・不幸せ診断」ワークショップを開催する等、Well-beingの観点から従業員同士の繫がりを積極的に創出しているのだそう。このような運用施策を徹底して行った結果、CO-EN LABOの従業員は幸福度が5.7ポイント、生産性が1.3ポイント向上しており、まさにWell-beingな働き方の実現に繋がっています。
最後に日立製作所で「CO-URIBA」を開発した西本さんからは、「CO-URIBA」がWell-beingを高める実例を伺いました。“小さなスペースを生かし、ともに売り場をつくりたい”というコンセプトで日立製作所が提供する小型無人店舗サービス「CO-URIBA」は、利用者の生体情報とクレジットカード情報などの決済情報をあらかじめ登録しておくことで、利用時に顔認証するだけで棚から商品を手に取ると自動で決済が完了する無人店舗サービスです。
さらに「CO-URIBA」にはありがとうクーポン機能が搭載されており、これは会社から従業員へ配布されたのち、従業員同士で、感謝の気持ちをクーポンで贈り合えるというもの。クーポンは遠隔でも贈り合えるため、テレワーク時代のいま、オフィスで会う機会の少ない従業員同士であっても感謝の気持ちを伝え合うことでコミュニケーション活性化に活用されています。
実は西本さんは、「CO-URIBA」開発当時はリテール向けの販売だけを想定していたと話し、ある日、社内の総務担当者から「CO-URIBA」のWell-being活用提案を受けたのだそう。最初はWell-beingに対して懐疑的な気持ちもあったものの、感謝の気持ちを伝えることができるありがとうクーポン機能を実装し社内で試したところ、Well-beingの重要性を理解するとともに「CO-URIBA」がWell-being推進に繋がるという新たなビジネスチャンスに気付いたのだそう。
その後、日立製作所社内でWell-being推進施策を提案し、社内ではすでに「CO-URIBA」のありがとうクーポンを5,000人の従業員が2万枚以上の贈り合っており、クーポン利用者の幸福度向上の結果も出ていることを紹介。「CO-URIBA」は既に国内約25拠点で導入されており、企業でのWell-being施策としても広がりをみせています。
イベント後半では参加者からの質問に回答するトークセッションを開催。
例えば「日本ではWell-beingに対して宗教っぽいという意見や、会社は個人の自己実現の場ではないという反発により、Well-beingの浸透ハードルを感じるが、どのように浸透させれば良いか?」という質問に対しては、前野さんから「日本は会社に奉仕することが重視され、自身のWell-beingが蔑ろにされがち。Well-being向上により生産性や収益に繋がるというエビデンスをまずは社内で共有し受け入れる体制をつくることが大切」と回答しました。
あわせて従業員の主体性も重要であるとし、理不尽な指示を受けると「やらされている」と感じ、この理不尽因子により従業員の疲労度に影響が出てくるのだそう。長野県にある伊那食品工業の事例をあげ、30年間ずっと増収増益を続ける伊那食品工業では、上層部が目標を設計して指示をするのではなく、現場で目標設計することを徹底しており、それにより現場での主体性がうまれ収益にも繋がっている事例を紹介しました。
最近耳にすることが増えたWell-beingについて、企業も従業員もどこか他人事な印象をもっている人がまだ多いのではないでしょうか。イベントのなかで実際にWell-being推進が企業の生産性向上に繋がる結果を伺い、企業が経営戦略として従業員のWell-being推進に向き合うことの重要性を感じました。私たちも一人ひとりが改めてWell-beingな働き方を意識し、社会全体で幸福度の高い豊かさを実現できると良いですね。
WORKMILLでは「はたらく」の多様な可能性を探るべく、今後もあらゆるイベントを開催していきます。気になるイベントがあればぜひご参加ください。
テキスト:赤星 昭江
写真:株式会社ATOMica、株式会社オカムラ
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授
武蔵野大学 ウェルビーイング学部 学部長・教授
株式会社日立製作所 金融システム営業統括本部
事業企画本部 Lumada事業推進部 部長
✅ 今回の出張先「CO-RiZ LABO」とは?
リモートで誰とも会わずに一人で仕事が完結できるようになった昨今、オフィスに求められる真の価値は「感情共有体験」ができることである。例えばフリーアドレス導入により、座席を自由に選択できるようになったが、その分チームへの帰属意識が薄れてしまわないよう、部署の拠り所となる場「BUSHITSU」が必要になる。シェルフややぐらを用いた仕切りは、チーム内の一体感を高め、同時にチーム間のコミュニケーションを促進する。また、超集中空間では、研究データを元に最適な室温や香り、音などが設定されており、誰にも邪魔されない最も集中しやすい環境で仕事ができる。多様な環境を用意し、ワーカーが各々のベストな環境を自ら『考』え、効『率』よく働くことができる、それが「CO-RiZ(考率)LABO」の在り方である。
ワークスタイル
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「これからのはたらく」を知りたい方、考えたい方、つくりたい方、相談したい方、見学したい方、仲間が欲しい方・・・
もし少しでも「ピン」ときたら、お気軽にSeaにおたずねください。