REPORT

2025.02.06

【イベントレポート】「働く場所を変えると何が変わる?オフサイトの魅力と地域へのインパクト」を開催しました

オフィスや会議室を飛び出し、いつもとは違う特別な場所で働く「オフサイトワーク」。自然豊かな環境で深い対話を重ねることで、チームの絆がより強くなり、大胆な意思決定を後押しするだけでなく、地域が抱える課題解決につながるなどあらゆる可能性を秘めています。
オカムラぶっとび社員の“DJ YOKO”こと甲斐蓉子さんをモデレーターに南房総で廃校を活用した複合施設「SHIP」を手がける牧野圭太さんと、ワークスタイル研究の第一人者・松下慶太教授をゲストにお迎えして、2025年2月6日に開催したイベントのレポートをお届けします。

働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変えることをテーマに掲げるWORK MILL(ワークミル)プロジェクトでは、「はたらく」の多様な可能性を探るイベントを開催しています。今回のテーマは今注目を集めている「オフサイトワーク」について。ゲストに南房総で廃校を活用した複合施設「SHIP」を手がける牧野圭太さんと、ワークスタイル研究の第一人者・松下慶太教授をお迎えし、「オフサイトってどう活用すればいいの?」「地域の未来にどんなインパクトをもたらすの?」そんな疑問を参加者の皆さんと一緒に理解を深めました。

 

当日司会進行を担当したのは“DJ YOKO”ことWORK MILL共創アンバサダーの甲斐さん(写真左)とWORK MILLコミュニティマネージャーの岡本さん(写真右)。今回の企画は甲斐さんがSHIPで牧野さんと出会ったことがきかっけとなり開催に至りました。

オフサイトワークってなに?ワーケーションと何が違うの?

オフサイトワークとワーケーションの大きな違いは「個人」と「チーム」どちらに焦点を当てているかで異なります。まず、ワーケーションという言葉は「ワーク(Work)」と「バケーション(Vacation)」からなる造語で、仕事と休暇を組み合わせた働き方を指すもので、いわゆる個人のリモートワーク手段のひとつとして、仕事をしながら新しい場所でリフレッシュや観光を楽しむことを目的としています。ワーケーションはリゾート地や観光地で行われることが一般的で、社員個人が仕事で行っているのか、観光で行っているのかを区別することが企業として難しいとの意見もあります。対してオフサイトワークは、オフサイトミーティングという言葉から派生したもので、オフィスや会議室を飛び出して、いつもとは違う特別な場所で行われる社内会議を意味します。チームビルディングや戦略的な計画など、じっくりとチームで議論したい内容を取り上げることが多く、ワークショップやブレスト、チームメンバー間の交流が重視されます。いつもとは違う特別な場所での会議は、参加者に刺激を与え、クリエイティブな活動や集中力を高めるのに役立つと期待されています。

このように、ワーケーションは主に個人がテレワークの延長として柔軟に仕事をすることを目的としたものに対して、オフサイトワークは主に社内の戦略設計やチームビルディングの強化に焦点を当てている点が大きな違いとなります。

 

当日はお酒を飲みながら参加者およそ10名程の皆さんと意見交換をしながらオフサイトワークの魅力を探りました。

「一旗あげる、一皮むける、一肌脱ぐ」3つの関係モデル

ワーケーションやオフサイトワークなどの新しい働き方、働く場所と若者、都市・地域との関連をメディア視点で研究する関西大学社会学部の松下慶太さんは、ワーケーションやオフサイトワークの魅力を次のように語ります。「ワーケーションやオフサイトワークのような働き方を取り入れてくれている人は、“地域や社会に貢献したい”という想いや意識を持っている人たちが多い印象で、個人的にそういう人たちを“一肌脱ぐ”というキーワードで語るようにしています。これは、上京して成功しようとする“一旗あげる”から、組織のなかで修羅場をくぐり抜けて成長する“一皮むける”というプロセスに加えて社外や地域の方々との関係性に軸を置きその人たちのために役立とう、還元しようという“一肌脱ぐ”というものです」。地域のために“一肌脱ぐ”というアクションは、地方移住など分かりやすいものだけでなく、越境のような形で地域に関わり続けることで地方へインパクトを与えることに期待ができるのだそう。特に最近、学生や若い世代の人たちに“一肌脱ごう”という地域への貢献に意欲的な人が多いように感じると松下さんは話しました。

松下さんが定義する関係モデル。どのモデルが先ということもなく、一肌脱ごうと立ち上がった後で一旗あげるために力をつけようとすることでモチベーションに繋がったり、そうした循環を行政や企業がつくっていけたらと語る松下さん。

渋谷と岩井海岸、観光客も地元の人も誰もが来やすい複合施設をつくりたい

千葉県南房総市の岩井海岸で、もともと渋谷区が臨海学校として所有していた廃校を再生し、渋谷と岩井海岸とをつなぐ公園をつくるプロジェクト「SHIP / SHIBUYA IWAI PARK」に取り組む南房企画代表の牧野圭太さん。東京から車で75分程と、都心からも気軽に行ける岩井海岸は、その立地からかつては臨海学校の聖地のような場所で、1960年頃は観覧車や遊園地があったりと賑わいのある場所だったのだそう。それが次第に衰退し、現在は国内の人口1万人以上の町のなかではトップレベルで高齢化がすすんでいるそう。

牧野さんが再生プロジェクトに取り組むSHIP。カラフルな外壁は自分たちで塗装をしたりとDIYもしているのだそう。山羊のシーさんもSHIPで一緒に生活中。(SHIP公式サイトより)

これまで東京で生活をしていた牧野さんはなぜ千葉県南房総市で再生プロジェクトに取り組むことになったのでしょうか。

「たまたま3年前に岩井海岸の近くに行く機会があったんですけど、そこで廃校を見た時にすごく良い場所だなと感じて。ふと看板を見ると渋谷区富山臨海学園とあり、当時も今もそうですけど渋谷に住んで渋谷で長く働いている自分にとって、この学校を再生することは渋谷に貢献できるものであり、自分の地元である千葉県へも貢献できる仕事なのではと感じました。いつか千葉県に関わる仕事ができたらと考えていたので、これは最適な機会だと感じて、プロジェクトを立ち上げました。SHIPを観光客も地元の人も、誰もが気軽に来れる公園のような場所にしたいという想いで、週末は地元の人が遊びに来やすいイベントを企画したり、平日は都市部の企業向けにインキュベーションオフサイト施設として活用してもらえるような企画を仕掛けています」と牧野さんは話しました。

SHIPで開催されたイベントの様子と、牧野さんがクラファンで1,000万円の資金を集め、整備をしたシャワールーム。

オフサイトワークの魅力と可能性について、参加者の皆さんとディスカッション

イベント後半は、松下さん牧野さんと参加者の皆さんとで、オフサイトワークの魅力についてお酒を飲みながらゆるりと語り合いました。

 

牧野さん:ワーケーションっていつからあるものなのですか?

 

松下さん:海外では2010年頃からデジタルノマドを中心に広がってきたもので、日本では2020年頃からコロナ禍での新しい働き方としてワーケーションが多くの人に認識されてきた印象ですよね。ただ、ワーケーションというとバケーション=遊び・休暇の印象が強い気がします。日本はバケーション文化が強いため、ワーケーションをしてますというと仕事をしていないように思われたり、そのため企業がワーケーションを開催する時ってめちゃくちゃコンテンツを詰めて開催したり、言い訳を用意しているケースが多い気がします(笑)。仕事は辛いことが当たり前みたいな、社会全体のカルチャーが日本にはありますよね。だから「休むこと=悪」という、社会の刷り込みがなくならないと、ワーケーションは根付きにくいと思います。

 

牧野さん:そういった点では、ワーケーションよりオフサイトワークの方が可能性を感じます。普段の常識や、上司や役職のようなものから離れて働くという概念が求められているように思います。

 

オフサイトワークの魅力について、参加者の皆さんも互いに意見を交わし盛り上がりました。

当日参加された方からオフサイトワークについても感想をいただきました。

参加者の方(20代・女性):オフサイトワークのような形で、働く場所がいつもと違う場所、だけどワーケーションのようなバケーション中心ではなく仕事がメインという前提のある環境だと、会社の上司や同僚との距離が近付きやすいように感じます。私はいま20代で会社では若手社員として扱われますが、ハラスメントへの意識が強いためか、上司や先輩たちから踏み込んでもらえていないような、壁を感じることがあります。オフサイトのような開かれた環境のなかでもっと密なコミュニケーションができたら嬉しいです。

 

参加者の方(40代・男性):オフサイトは本音を引き出すという意味では最適ですよね。ただ決裁を得るなどは結局オフィスのような固い環境でないと難しいイメージもありますね。

 

牧野さん:たしかにそうですよね。ただオフサイトによって関係性を近づけることで、最後の判子を押す後押しに繋げるというか、突破できる可能性は広がるかもしれません。

 

参加者の方(40代・男性):昨年の夏に都内の奥地でオフサイトワークを体験しました。チームに育休明けの女性社員がいて、育休期間中は飲み会ができなかったことから、復帰祝いを兼ねてオフサイトワークで1日仕事しようとなったのですが、とても良い時間になりました。私も千葉県出身なので、次回は南房総のSHIPでオフサイトワークを体験したいです。

 

牧野さん:千葉県ってオフサイトワークのポテンシャルがめちゃくちゃ高いと感じています。東京からの距離も近い割に、海もあって、自然も豊かで、夜は綺麗な星空が見える…。なにより東京では感じられない刺激や、偶発的な出来事も魅力です。例えば私自身の話ですが、半年ぐらい岩井海岸に住んでいると地元の方々とのコミュニティもできてきて、先日もあるきっかけで地元の方から漁村の古民家を100万円で購入したら、おまけで宅地と山林の土地が2つ無料でついてきて(笑)。その後、古民家自体は別の方に売却したんですが、宅地と山林が実質無料で手元に残りました。東京だと考えられないような出来事があるのも地方ならではの魅力だと思います。

 

松下さん:地方と都市部のような異なる地域において、人生で出会う予定のなかった人たちが出会うことで生まれるインパクトは魅力ですよね。企業のダイバシティ研修としても有効だと思いますし、社内組織の強化としても、会社やあらゆるしがらみからオフサイトすることで、相手の意外性を知るきっかけに繋がったり、チームや組織の強化に期待ができますね。

ゲストのお二人と参加者の皆さんとともに、オフサイトワークの可能性について意見交換をしました。
イベントの最後に参加者の皆さんと記念撮影。

都市部と地方、それぞれ異なる人脈を築くことで、新たなインプットや視点が得られ、仕事やプロジェクトの可能性が大きく広がります。多拠点生活や移住はハードルが高く感じるかもしれませんが、まずはオフサイトワークなどを活用し、いつもと違う環境で働いてみるのも一つの方法です。新しい場所での体験が、思いがけない発見やチャンスにつながるかもしれません。

WORK MILLでは「はたらく」の多様な可能性を探るべく、今後もあらゆるイベントを開催していきます。気になるイベントがあればぜひご参加ください。

 

 

テキスト:赤星 昭江
写真:株式会社ATOMica、株式会社オカムラ

 

 

 

- 登壇者

牧野 圭太 氏

南房企画/株式会社DE 代表

早稲田大学理工学部卒業。東京大学情報理工学系研究科修了 。2009年博報堂に入社。コピーライター配属。2015年に独立し、2020年からDEを創業。社会的意義のある広告コミュケーションを追求する。2021年「広告がなくなる日」を出版。2023年7月に「南房企画」を設立し、南房総の地方創生に力を入れる。

松下 慶太 氏

関西大学社会学部 教授

京都大学にて博士(文学)。専門はメディア論、ソーシャル・デザイン。近年はデジタル・ノマド、ワーケーション、コワーキング・スペースなどメディア・テクノロジーによる新しい働き方・働く場所を研究。近著に『ワーケーション企画入門』(学芸出版社、2022)、『ワークスタイル・アフターコロナ』(イースト・プレス、2021)、『モバイルメディア時代の働き方』(勁草書房、 2019)など。

甲斐 蓉子(DJ YOKO)

株式会社オカムラ 事業戦略部 CXデザイナー/共創アンバサダー

武蔵野美術大学卒業後、オカムラにてスペースデザイナーとして入社。夫の転勤により7年弱タイ駐在。その間、3児の母でありながら、Bangkok Mothers&Babies International にてカメラマン、グラフィックデザインやイベントの運営・企画に携わる。21年に本帰国し、オカムラに再入社し現在に至る。世界50か国弱をバックパッカー1人旅し、その知見や世界の人とつながるコミュニケーション能力で、新しい顧客体験につなげていく。
■イベント概要
開催内容: 働く場所を変えると何が変わる?オフサイトの魅力と地域へのインパクト
共  催: 株式会社オカムラ
開催日時:2025年2月6日(木) 18:30-20:30
開催会場: 東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート3階 オカムラガーデンコートショールーム内
開催形式:リアル参加40名程
参加費用:無料

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