REPORT

2025.01.22

【イベントレポート】「コミュニティマネジメントスキルで組織を動かすには?~組織改革と共創のヒントを学ぼう~」を開催しました

イノベーションや風土改革の鍵として注目される「共創」。人や組織をつなぎ価値を生む“共創人財”=コミュニティマネージャーが注目されています。全国でソーシャルコワーキング®を展開するATOMica代表の嶋田瑞生さんと、フリーランスで活躍する中野智文さんをゲストに迎え、2025年1月22日に開催したイベントのレポートをお届けします。

働く環境を変え、働き方を変え、生き方を変えることをテーマに掲げるWORK MILL(ワークミル)プロジェクトでは、「はたらく」の多様な可能性を探るイベントを開催しています。今回は、「共創」をキーワードに活躍する“コミュニティマネージャー”のお仕事から組織改革やイノベーション創出のヒントを学ぶことを目的に、全国でソーシャルコワーキング®事業を展開するATOMica代表取締役の嶋田瑞生さんと、札幌でコミュニティマネージャーとして活躍する中野智文さん、WORK MILLコミュニティマネージャーとして大阪beeで活躍する大西清美さんをゲストに迎え、活動内容や実践的なノウハウについて教えていただきました。

 

当日は満席に近いご参加をいただき、コミュニティマネジメントや共創に対する関心の高さが伺えました。ファシリテートはWORK MILLの宮野さんが担当。

コミュニティマネージャーは潜在的な課題を汲み取り幅広く願いを叶えるスペシャリスト

そもそもコミュニティマネージャーというお仕事について皆さんご存知でしょうか?

コミュニティマネージャーのお仕事は、コワーキングスペースなどのコミュニティにおいてコミュニケーションを図り、人と人との架け橋となる役割を担っており、近年ビジネスの場や地方活性化などさまざまなシーンで注目をされています。業種や目的などにより業務内容は多岐にわたりますが、ATOMicaの嶋田さんはコミュニティマネージャーの定義について、次のように話します。

「ATOMicaとしてコミュニティマネージャーを定義するうえで、まず大事なのが潜在的な願いや悩みに寄り添い、その想いを顕在化させ、ライトパーソンに繋ぐことで幅広く想いを叶える役割だと考えています。例えばよく比較されるひとつにインキュベーションマネージャーとコミュニティマネージャーの違いがあります。前者は課題感や目的が明確な人をサポートするケースが多いのに対して、コミュニティマネージャーは、さまざまな目的をもって集まった課題や目的がまだそこまで具体的な言葉になっていない曖昧で言語化できていない人たちに対しても、対話のなかで課題を汲み取り、適切な人に繋いであげることが重要な役割になります。そのため、ATOMicaでは“頼り頼られる関係性を増やすこと”を会社のミッションに掲げ、日々あらゆる人たちとの積極的なコミュニケーションに努めています。この関係性を“コミュニティの束”と捉え、コミュニティ内のそれぞれの願いや目的(WISH)を有機的に繋いで(KNOT)いくことで、1:1を次第に1:Nに広げていき、コミュニティの束をどれだけ強く太くしていけるかを重視しています」

コミュニティマネージャーは潜在的な課題に寄り添い、課題や目的を顕在化させバトンを繋いでいく役割の人たちだと嶋田さんは話します。

また、嶋田さんは、コミュニティマネージャーの指針として5つのVALUEを定義しているのだそう。

「ATOMicaではコミュニティマネージャーに5つのVALUEを定義しています。相手のことを考えた時にイエスマンになるのではなく、言いにくいことであっても相手のために言ってあげることとして“努めて、愛す”のほか、相手が言っていることをそのまま真に受けて動くのではなく、質問や対話のなかで相手が気付いていない潜在的な課題を明確にしていく“ほんまに?や、社内外での成功事例や良いことは積極的にシェアしようという“ナイスシェア”など、5つの項目を掲げています。指針を定義することで、コミュニティマネージャーという役割が明確になるため、コミュニティマネージャー本人も仕事に対する理解が深まります。コミュニティマネージャーを活用している(または今後活用を検討している)企業や団体では、自分たちのコミュニティが大切にする指針を定義すると良いと思います」

ATOMica公式サイトより、コミュニティマネージャーの5VALUE

さらに嶋田さんは、コミュニティマネージャーと利用者の距離を近づける工夫として、3つのタイミングとコミュニケーションボードの活用を実践的な事例として紹介。

「利用者の方とコミュニティマネージャーが対話できるタイミングとしては、来店時、一時退店時、退店時の3つがあります。これは受付という場所がコミュニケーションを図るうえでベストで、そのためATOMicaでは基本的にコミュニティマネージャーが受付を担当することで、このタイミングを逃さないようにしています。また、その際に、役立つのがコミュニケーションボードです。コミュニティ内でのイベント告知や企業のプレスリリースなど、コミュニケーションボードに掲示することで対話のきっかけになり、利用者の方との距離を近づける機会に繋がります。本日イベント会場のSeaだと、赤坂のオススメランチや過去のイベントレポートをコミュニケーションボードに貼っていたりしますね」

ATOMicaが運営する共創施設のコミュニケーションボード事例を紹介。
共創空間Seaでは、コミュニティマネージャーの自己紹介シートや、赤坂ランチマップ、過去のイベント事例などをコミュニケーションボードに貼って紹介しています。

ATOMica公式サイト

https://atomica.co.jp/

 

 

CO-CREATION PARK KAWARUBA

さらに当日は、昨年11月に川崎重工が開設した新たなソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK – KAWARUBA(カワルバ)」から原純哉さんにお越しいただき、当日のイベントの様子をグラレコでまとめていただきました!CO-CREATION PARK – KAWARUBAでは、外部との共創によって事業開発に取り組んでいくことを目指しており、今回のイベントでもSeaの共創仲間としてご参加をいただきました。気になる方はぜひCO-CREATION PARK – KAWARUBAへ足を運んでいただけたらと思います!

当日、グラレコでイベント内容をまとめてくれた川崎重工の原さん。Seaのコミュニケーションボードに貼ってあるので、Seaにお越しの際はぜひチェックしてみてください。

✅CO-CREATION PARK KAWARUBA公式サイト

https://kawaruba.com/

 

 

現場で活躍するコミュニティマネージャーのお話

後半は実際にコミュニティマネージャーとして活躍する中野さんと大西さんが登壇。「地域」と「組織」という異なる環境のなかでコミュニティマネージャーのお仕事をするお二人から、共創のヒントを伺いました。

<札幌という地域で行政、企業、移住者など多様な人たちを結ぶコミュニティマネージャー中野さん>

札幌という地域のなかでコミュニティマネージャーとして活躍する中野さん。学生時代からこども食堂などコミュニティ運営に関わり、卒業後はフリーランスとして北海道新聞社の新規事業である「SAPPORO Incubation Hub DRIVE」(2024年5月閉業)のコミュニティマネージャーとして、行政やスタートアップなど多様な人たちと関わり、現在は学生支援や、毎年9月に札幌で開催される街中同時多発フェス「NoMaps」に携わる等、地域コミュニティの活性化に取り組んでいます。

 

左:「SAPPORO Incubation Hub DRIVE」で企画したイベント事例。右:中野さんが関わる地域の人たちの輪は多様で幅広い。

✅NoMaps公式サイト

https://no-maps.jp/

 

 

<営業とコミュニティマネージャー、兼務業務で活躍する大西さん>

オカムラが運営する共創空間beeでコミュニティマネージャーとして活躍する大西さん。医療施設の家具を提案する営業活動に従事する傍らで共創空間beeのコミュニティマネージャーとしても活動しています。beeで企画したイベントはすでに350回以上で来場者数も2万人程、万博協会や大阪大、その他行政・企業など多様なパートナー企業との共創空間としても実績を出している拠点です。大西さんが大切にしていることの一つに、社内理解を得て社内の人に相談できる環境や関係性づくりが重要と、組織内のコミュニティマネージャーならではの意見をいただきました。

 

オカムラの工場がある東大阪市と連携したイベントを企画。
コミュニティマネージャーと専門営業スタッフとして活躍する大西さんの1日は物件見積・提案からイベント打合せ・開催までと幅広い。

✅大西さんがコミュニティマネージャーをつとめる Open Innovation Biotope “bee”公式サイト

https://bee.workmill.jp/

 

クロストーク:皆さんからの質問に嶋田さん、中野さん、大西さんが回答!

<質問:イベント企画の作り方や、人とどのようにつながっていますか?>

中野さん:自分が参加したいイベントを企画するようにしています。そうするとモチベーションが上がるし、興味のある分野なので、自然と他のイベントにも足を運ぶようになります。そこで登壇者をスカウトしたり、新しいつながりが生まれたりするのも楽しいです。また、人とのつながりを広げるために、今日のようなイベントに参加して交流したり、「コミュニティマネージャー」という肩書きを活かして積極的に声をかけることも意識しています。さらに、人と人をつなぐのが得意な人の自己紹介や他己紹介の仕方を参考にすることで、自分なりのつながり方を磨いていきたいと思っています。

 

大西さん:人からイベント企画することもあれば、イベント内容を先に決めて、このイベントならどんな人を呼ぶのが良いかな?と考えて企画することもありますね。

 

宮野さん:私はどちらかというと人ありきでイベント企画を考えることが多いです。あと大事にしていることとして外部の方をお招きしてイベントを開催する際に、企業PRのような形で丸投げするのではなく、私たちが運営している共創イベントでは、自社にとっても登壇いただく企業にとっても、また来場いただく方にとってもメリットのある企画になるよう意識しています。そうすることで自然と全員の視座が同じになり、良いイベントになっている気がしています。

 

<質問:コワーキング施設が年々増えているなかで、集客はどのようにしていますか?>

嶋田さん:そもそもコワーキングというワードが東京では認知が高いと思いますが、地方だと伝わらないことも多く集客のハードルが高いケースもあると思います。だから、コワーキングという言葉だけで伝えるのではなく「このスペースをこう使ってほしい」というイメージから伝えていくようにしています。例えば、ATOMicaは2019年に創業したのですが、コロナ直後の宮崎ではコワーキングという名称認知はまだまだ低かったです。そんななか、ATOMica宮崎の拠点を毎週1回使ってくれているおばあちゃんがいて、山奥で窯をもって陶芸をされている方だったのですが、自宅にネットワーク回線がないため1週間に1度ネットサービスを使いにATOMica宮崎を使ってくれていました。そこで、コミュニティマネージャーから、作った陶芸作品をこの場所で売りませんか?と提案をし、販売をすることになりました。コワーキングスペース=仕事をする場所と決めつけずに、その場所にあった使い方をコミュニティマネージャーがつくりだしていくことが大事だと思いますね。

 

<質問:コミュニティ運営の成果を測る、定量的な測定方法はありますか?>

中野さん:SAPPORO Incubation Hub DRIVEでは具体的な数値目標こそなかったものの、北海道新聞社からはSNSでの投稿による盛り上がりを評価していただいていました。また、DRIVEの運営について聞かれた際には、コワーキングスペースを利用する人の気持ちや目的を丁寧に説明するよう心がけました。

 

大西さん:コミュニティマネージャーそれぞれ部門業務の評価をもっていますが、イベント件数や新しい価値につながったか、ファンがどのくらい増えたかなどを見ています。共創の価値を社内で発信し続けることが重要です。

 

嶋田さん:施設毎で異なりますが基本的にはWISHとKNOTを評価として捉えています。それぞれの施設に評価指標がたくさんありますが、そうした評価を極力少なくしていけたらと考えています。というのも、評価軸が多いとコミュニティマネージャーがどれだけでも頑張れてしまう訳で、評価がブレてきます。個人的には全てのコワーキング施設においてWISHとKNOTが評価指標の伝家の宝刀になり得る可能性があると考えていて、ここに特化したいと考えています。

 

宮野さん:WISHとKNOTの件数以外に、質という側面ではどうですか?

 

嶋田さん:現時点では件数を重視しています。量質転化的な考えからまずは数を追うべきではという考えもありますが、そもそも良いKNOTと悪いKNOTって何だろうね?という議論を社内でよくしています。例えば良いKNOTのひとつに“自分をKNOTして叶うこと”と“他人をKNOTして叶うこと”に対して、距離が離れている方が良いKNOT(価値が高い)という捉え方があります。要するに後者の方がコミュニティマネージャーという介在価値を発揮できたという評価の考え方です。あと、WISHの顕在化も重要です。例えば「痩せたい」というWISHに対して、そのWISHの深層にあるのは「モテたい」からなのか、「健康になりたい」からなのかで大きく違います。なので、コミュニティマネージャーという仕事はWISHに対して「なんで?」を重ねていく、そうした継続的な対話を通してWISHを顕在化、見える化、言語化していくことって相当奥深いと感じています。

 

 

イベントのなかでコミュニティマネージャーという仕事はビジネスパーソンに求められるニーズを読み解くスキルを身に付けたプロという言葉が印象的でした。相手が求めていることを深く理解してどう解決できるかを考えるということは営業職や企画職、技術職などのように事業を円滑にすすめるために重要な職種の1つだと思います。コミュニティマネージャーという職種が今後さらに世の中に浸透し、活躍の幅が広がっていきそうですね。

WORK MILLでは「はたらく」の多様な可能性を探るべく、今後もあらゆるイベントを開催していきます。気になるイベントがあればぜひご参加ください。

川崎重工の原さんが描いてくれたグラレコはSeaのコミュニケーションボードに飾ってあります。Seaにお越しの際にはぜひ見ていただけたらと思います。原さん、ありがとうございました!

 

テキスト:赤星 昭江
写真:株式会社ATOMica、株式会社オカムラ

 

 

- 登壇者

嶋田 瑞生 氏

株式会社ATOMica 代表取締役Co-CEO  

大学1年生の起業・会社経営体験を通じて様々なオトナと出会い、 そして共創が起きていく面白さに気付く。新卒では株式会社ワークスアプリケーションズにエンジニアとして入社し、顧客巻き込み型の開発スタイルを学んだのち、2019年4月にATOMicaを創業。創業から5年で累計資金調達額は13億円、従業員数は100名を超え、北海道から沖縄まで事業展開を進めている。2024年度地方創生テレワークアワード(地方創生担当大臣賞)受賞。

中野 智文 氏

元SAPPORO Incubation Hub DRIVE コミュニティマネージャー/NoMaps 広報

高専の建築学科を卒業後、札幌市立大学デザイン学部へ編入、同大学院へ進学したのち退学。卒業研究では農家とコミュニティを立ち上げ、子ども向けコミュニティ通貨の実証実験を行った。その後はSAPPORO Incubation Hub DRIVEにてコミュニティマネージャーを1年半ほど務めていた。現在は、NoMaps広報や北海道移住ドラフト会議の運営をしつつ、札幌でコミュニティマネージャーのためのコミュニティづくりを計画中!

大西 清美

株式会社オカムラ WORK MILLコミュニティマネージャー

大学で情報メディアについて学び、オカムラへ入社。関西、中国、四国エリアにおける医療施設の空間提案に携わり、医療従事者、患者さんに寄り添った空間づくりを行っている傍ら、2017年より”Open Innovation Biotope bee”で「はたらく」をキーワードにしたイベント、企画・運営に携わる。

宮野 玖瑠実

株式会社オカムラ 働き方コンサルティング事業部 WORK MILL統括センター

北海道札幌市生まれ。大学で国際公共政策を学び、2021年株式会社オカムラに入社。設計事務所やゼネコンへの提案営業を経て、2023年8月にWORK MILL統括センターへ異動。Open Innovation Biotope ”Sea”での共創活動やイベント企画運営に携わる。
■イベント概要
開催内容: コミュニティマネジメントスキルで組織を動かすには?~組織改革と共創のヒントを学ぼう~
共  催: 株式会社オカムラ
開催日時:2025年1月22日(水) 19:00-21:00
開催会場:Open Innovation Biotope “Sea”(東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニガーデンコート3階 オカムラガーデンコートショールーム内)
開催形式:リアル参加50名、オンライン参加100名
参加費用:無料

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