REPORT

2016.01.29

”SEA DAY 01” 開催レポート 後編

複雑化していく社会環境の中で、オカムラが「はたらく」を描く実践の場として開設した、OPEN INNOVATION BIOTOPE “Sea” 。後半は6つのワークショップを通して、「これからのはたらく」について参加者同士が熱い議論を行いました。

Intermission

”Sea”がサポートする「気づく→考える→はじめる」というプロセス

SEA DAY 01の最後のパートとなるMeetup Festivalのスタート前に、ディレクターのひとりである庵原から、OPEN INNOVATION BIOTOPE “Sea”の取り組みが紹介されました。

「”Sea”には『これからのはたらく』のヒントがある」というキャッチコピーの通り、これまでも、そしてこれからも働き方変革や新たな価値創造に向けた働き方や働く場に関するヒントが得られる場づくりを”Sea”は行っていくことを庵原は説明。

”Sea”の開催するイベント体系を紹介

また、それだけではなく、「得たヒントを活かすプロセス、つまり今回のテーマでもあるゼロからイチを引き起こすための『気づく→考える→はじめる』という3つのプロセスを、”Sea”はサポートすることができると考えています」。働き方変革やイノベーションを引き起こす上で必要な気づきや考えを生み出し、さらに実際の行動へうつすという一連のプロセスを支援する3つの枠組みを設けていくことが説明されました。

庵原は、「これから行われるMeet Up Festivalは、考えるだけでなく、『0→1』をはじめるための第一歩であり、初回のセッションだと思ってください」と参加者に言葉を投げかけました。

Meetup Festival

休憩をはさんでSeaの会場が3つに分断され、参加者はそれぞれのスペースに別れてMeetup Festivalがスタート。前後半に分かれ、全部で6つのテーマについて、深い議論に向けたディスカッションが同時多発的に開催されました。

[A-1]  ワーク・エンゲイジメント Eng@WA 第1回公開研究会

近年、職場環境や人間関係による環境のミスマッチの問題や、テクノロジーの発達、パソコンの普及などによる仕事と日常のシームレス化などが問題となっています。こういった問題に対するソリューションとして、「ワーク・エンゲイジメント」という考え方に着目し、2015年10月に設立されたのが、「Eng@WA(エンガワ)」コンソーシアム。

今回のMeet upでは、2名の登壇者から、ワーク・エンゲイジメントと、従業員の気分を測定する音声解析技術について紹介されました。

「ワーク・エンゲイジメント」とは、「仕事に誇りをもって、仕事にエネルギーを注ぎ、仕事から活力を得て、健康的に活き活きと働く状態」のこと。前半は、コンソーシアム幹事である西 大輔氏から、日常のちょっとした心がけで、お金をかけずに実践できる、ワークエンゲイジメントの高め方が紹介されました。

後半は、ワーク・エンゲイジメントを高めるために期待されているソリューションのひとつとして、スマートメディカル株式会社の下地 貴明氏が音声気分解析技術を紹介。声からモチベーションを測定する技術デモを実演しました。実際にこの技術を利用している企業を例に、従業員のモチベーションが企業にとってどんな影響を与えうるのかを解説しました。

[A-2]  「はたらく」と「食」

今回のテーマの中心となったのは、「糖質と食べ合わせ」。

アンバランスな食事や運動不足といった、生活習慣から起こりやすいとされるメタボリックシンドロームや、糖尿病を防ぐための太りにくい食事の摂り方として、いま注目されているのが「ロカボ」。「ロカボ」とは、糖質を制限する食事法のことで、我慢しないゆるやかなダイエット法として、関心を集めています。

ロカボに効果的な食品として、ローソンが販売する「ブランパン」という商品を世の中にどう認知してもらうか、鈴木 一十三氏が考えていたときに出会ったのが、日の丸交通社でした。日常の業務上運動することが少ないタクシー業界において、同社の社長の「社員の健康状態を改善したい」という思いと「マチの健康ステーション」を目指す鈴木氏の思いが共感し、2社のコラボレーションによる、3ヶ月間の「ロカボチャレンジ」が始まりました。

今回のMeet upでは、実際に「ロカボチャレンジ」を行った、日の丸交通の渡部氏が登壇。「ロカボチャレンジ」の結果、血糖値の状態が改善されただけでなく、仕事の効率が上がったり、体調が良くなったりしたといった実感や、健康のために、正しい知識を身につけることの重要性を語りました。

[B-1]  紀尾井・番町・麹町 新しいまちプロジェクト

「新しいまちプロジェクト」では、Seaの所在地である千代田区紀尾井町・番町・麹町エリアのまちについて考える場づくりを準備中。大日本印刷株式会社の辻 千恵美氏を中心に、A・B・Cの3つのグループに分かれ、ワークショップ形式でこれからのまちづくりについて議論が行われました。

Aグループでは、この地域にあるリソース、アイテム、プレイヤーが書き出された無数の付箋が壁一面に貼られた状態でワークがスタート。それらを組み合わせ、まちを活性化させる新しいアイデアを作り出していきました。Bグループは参加者自身のつかう駅から職場までの道のりを思い返し、「その道すがらにこんなものがあったらいいな」という夢を語るように、ワークが進められていきました。Cグループは机一面に地図とまっさらな模造紙を広げ、実際のまちの様子をイメージしながらアイデアを書き込んでいく形でワークを行いました。

各グループの発表を受け、辻氏は「今回のワークを行って終わり、では意味がありません。変わりたいと思うビジョンを描き、実行可能な小さなアクションを積み重ねていくことで、まちを変えていくことを考えていきます」と締めくくりました。

[B-2]  オープンイノベーションの場づくり

岡村製作所がSeaを開設してから、はやくも1年。Seaディレクターの庵原は、「これまで様々なオープンイノベーションの機会を作ってきた経験値の中で、今までの空間づくりの方法論ではオープンイノベーションの場というものは上手く設計できないということが立証されてきた」と述べました。つまり、家具とそのレイアウト、そして内装、これらの3つの要素だけでは空間は作れても、OIPにはならないということ。

庵原と実践女子大学の松下慶太氏のディスカッションの中で、OIPを構築するために見えてきたいくつかの要素の候補が紹介されました。「作法」、「オンラインとオフライン」、「資産(アセット)」、「内発的動機」など、これらの要素はレイヤー構造になっており、どれが欠けても成り立たないと言えることが述べられ、また、OIPの価値指標として、「コラボレーション」をいかに計測するかについて議論が繰り広げられました。

OIPの分析は、まだまだ取り組み段階であることを参加者に示し、OIPに必要な要素を皆さんにも考えてほしいとして、その後はグループワークにうつりました。ワークの中では、「非日常」という言葉がどのグループからも頻繁に出されており、参加者の多くが、普段では感じることのない何かがOIPの要素として必要だと感じていることが抽出されました。

[C-1]  「美しく働く」 ~働く女性が美しさとともに活躍するワークスタイルとは~

「美しく働く」のセッションでは、自分が理想とする「活躍する『美しい女性』像」について考えるところから始まりました。「笑顔」、「輝き」、「自信」、「意志」などのキーワードが挙がる中、参加者との和やかな雰囲気で行われたクロストーク形式のミートアップ。

今回のセッションの背景として、岡村製作所の河野は「働き方が多様化している中で、社会の『はたらく』に対する意識も、もっと多様化していくことが必要だと感じる。時代の流れとともに決められてしまったものではなく、女性が本来持っている多様な美しさに着目をし、働く女性が明確な意思を持ち、美しく活躍できる場が広がること。それが、企業も人も幸せな成果をもたらすのではないか」と語り、株式会社資生堂の萩原なつら氏は「これから私も『かわいい』から『美しい』に変わっていけるのかな、ということを一緒に悩み、あまり堅苦しい形ではなく一緒に考えていきたいと思った」と述べました。

様々な議論の末、「『美しい』の定義はどこにあるのだろう」という問いかけに対し、「定義づけしようとすることが間違いなのではないか。そこから外れてしまったときに、当たり前かのように『変だ』と思われてしまうところにやりづらさを感じる。海外では多様性を受け入れることがとても自然なので、自分の意思を持ち、自分らしさを生かしやすいのではないだろうか」と参加者が述べた意見に対して、この日一番のうなづきが得られました。

[C-2]  ワークインライフ ~多様性の時代における、組織と個人のシステム&キャリアプランニング~

今回の主題である「ワークインライフ(WIL)」。これは自分のライフの幸せがまずあり、それを実現する手段の一つとしてワークがある、という考え方です。「自分の時間の使い方を振り返ってみると、仕事の時間や暮らしの時間、遊びの時間や勉強の時間などがある。それらの時間は互いに無関係ではなく、その時間の区別がなくなるということ。それがWIL」と、株式会社岡村製作所の薄は説明しました。

豊かなライフを送るための一つの手段としてワークを捉える。その上で必要な2つ、セルフマネジメント(キャリア&デザイン)と組織のマネジメント(ダイバーシティマネジメント)を考えていくワークショップが開催されました。

ワークショップでは、「生活・趣味・仕事・家庭・会社・その他の軸」の6項目に沿って、自分の象徴となっている事柄の絵を描き、グループで共有していきました。参加者のみなさんは仕事が忙しくも自分の趣味を持っているようで、仕事が休みの日もアクティブに趣味を充実させているという印象を受けました。

新しい働き方の実例が増え、働き方の過渡期といえるいまだからこそ、「こういうことをしたらいいのではないか」ということを考えて実践することで、組織は変わっていくのではないでしょうか。

Wrap Up

ワークとライフとオープンイノベーションが交じり合う新しい働き方の議論

Meetup Festival終了後、セッションの代表者として西 大輔氏、辻 千恵美氏、萩原 なつら氏、鈴木 一十三氏、松下 慶太氏、森田 舞の6名にご登壇いただき、Wrap Upとして各セッションの内容のシェアとディスカッションが行われました。

担当セッションの内容を紹介する登壇者
異なるテーマのセッションの共通性に言及する西氏

【シェア:セッション内容と今後の展望】

西氏:「ワーク・エンゲイジメント」とは、仕事にやりがいを感じて熱意をもって、没頭している状態のこと。このセッションでは、ワーク・エンゲイジメントがなぜいま求められてきているのか、どのようにしたら高めていくことができるか、ということをこれまでの研究や取り組みを踏まえて紹介した。

Eng@WAとしては、様々な企業や団体がワーク・エンゲイジメントに取り組む根拠や動機をつくりだしていけるような活動をさらに進めていきたい。

辻氏:普段働いているまちのまちづくりに対して、現場にいる働き手自身はどのようなことを思っているのか、様々な意見とアイデアをもらった。共通のビジョンを持ち、様々な企業の様々なリソースを掛け合わせていくことでまちの活性化につながるような活動ができればいいなと感じた。

まちづくりをいかに事業計画に盛り込んで具現化のプロセスに乗せるかという課題はあるが、今後はこのエリアの特徴的な文脈を生かし、「文化特区」を目指した活動を進めていきたい。

萩原氏:働いている女性で、美しいと思う人はどのような人なのかをみんなでディスカッションした。その中で、「これが美しさだ」と型にはめようとしていること自体が間違っているのではないかとの声があがり、「私はこう生きていく」という人それぞれの多様性を受容することが必要だという結論になった。

海外の女性は自分自身の像を明確に持ち、自由に働いているように感じる。今後は、そのような海外で働く女性の話を聞く機会を設けられるとよいと思った。

ディスカッションでは、思わず笑ってしまうような場面も

鈴木氏:近年、注目が高まりつつある健康経営の取り組みの一例として、日の丸交通さんの事例を紹介した。「健康経営」とは、自分の従業員の健康に投資をすることで、経営の生産を上げていく活動。セッションでは、実際にプロジェクトに参加した方々に実践談をを話してもらった。

参加者には、このセッションから今後自分ならどうするか、自分の会社ならどうするか、という明日の気づきへとつなげてもらいたい。

松下氏:空間とは違う「場」の新しい捉え方ということを軸に置き、オープンイノベーションスペース(OIP)に求められる要素とはなにかを議論した。話をしていくと、「楽しい」、「非日常」といった言葉が、理想的なOIPの要素として多く出された。今後、オープンイノベーションの場は、パフォーマンスや経験ができる一種の「ステージ」として捉えていくことがポイントになってくるのではないかと思う。

森田:「自身の生活」-「趣味」-「家庭」-「仕事」-「会社」-「自分が考えるワークインライフの軸」、この6つの軸から想起されるイメージ=絵を描きながら、自分自身のワークインライフを考えてもらった。ワークを通して、この6つの要素が有機的につながっていることを認識できたのではないか。

今後は、個人へのアプローチであるセルフマネジメントだけではなく、さらに組織のマネジメントへと言及の幅を拡げられればと思う。

組織のバランスを保ちながら、オープンイノベーションの場をつくるにはどうしたらよいのか

【ディスカッション:新しい働き方とは?】

一通りのシェアがなされた後、登壇者同士で様々なトークが繰り広げられました。

西氏は、各セッションの内容を踏まえ、自身が感じたことを話しました。「すべてのセッションに共通することが多いように感じました。ワーク・エンゲイジメントに取り組むことは、配偶者や家庭などに影響することがあるとわかってきています。これは、ワークインライフの取り組みと大きく通ずるものがあるなと思いました。個人がアクションすることで制度や組織が変わっていくという話も、共感できました」。

また、森田も、仕事と家庭のつながりに関して言及。ワークインライフのセッションでは、「ライフの中にワークがあるといい」という考えのもとで話し合う中で、「自分の興味があるものを仕事にできないか」という意見が出たとのこと。「一般的には、ワークとライフは別々に切り分けられていると思います。ですが、ライフがあり、その中にワークもホビーもあるという形が自然であり、私自身もそれを目指していきたいなと思いました」と森田は語り、話はここから、「はたらく」ということに関しての具体的な要素に展開。

セッションの内容のシェアや登壇者のディスカッションに耳を傾ける参加者

辻氏は、「オープンイノベーションに取り組むべきとはいえ、組織全体でみんながゼロからイチを生み出そうとするのは危険があると思います。組織の中にはそれぞれ役割があり、必要とされる中で、組織のバランスを保ちながら、オープンイノベーションの場をつくるにはどうしたらよいのでしょうか」と、疑問を投げかけました。

これに対し、「イノベーションとは非日常と言えると思います。この非日常は同心円で表すと辺境に位置され、辺境で行われていることは、だんだんと中心に伝わっていきます。ですが、いまよく見られる組織のイノベーションの取り組みは、組織の中心で非日常をおこそうとしてしまっているような気がします。私は、それは逆なのではないかと考えています」と、松下氏は組織のイノベーションの場の在り方を提示しました。

また、萩原氏は、新しい働き方に取り組む中での戸惑いや苦難を話しました。萩原氏は、「美しい生活文化を創造するという自社のミッションを達成するためには、社内で取り組むだけでは足りないと感じています。しかし、社員に社内という枠を超えた活動に取り組もうと思ってもらうことは簡単なことではありません」と述べました。

これに対して、鈴木氏から、「働く女性の美しさは中からはじまります。美しさとマインド、これは非常に重要な関係性があるのだと思います」と、新しい働き方というこれまでのトークの中から、女性の美しい働き方に関して考えたことを語りました。

 

数多くの観点から0→1(ゼロイチ)をテーマに議論がなされたSEA DAY 01。

「今回得た切り口や視点を生かし、今後につなげていきましょう」という庵原の言葉を最後に、Wrap Upが終了、一日の長きにわたるSEA DAY 01のすべてのセッションが幕を閉じました。

REPORTイベントレポート

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